polax416’s diary

学校ソーシャルワーカーやってます

意外と知られていない特別支援級のこと

せっかく学校に関わる仕事をしているので、意外と知られていない特別支援級のことを書きたいと思います。

 

まず、今の日本においての特別支援級とは、もちろん特別に支援を要するお子さんのための手厚いサポートが受けられるクラス、ということですね。ですが、「うちの子発達障害と診断を受けたから支援級に入れたいわ!」と保護者が望んでも、必ずしも入ることができるわけではないのです。そこに入るには、まず学校内で審議され、そこを通過したケースが今度は教育委員会主催の審議の場(医師、心理の専門家、発達関係の権威ある教授なども参加)へ出され、さらに審議されて承認されたケースにおいてようやく措置変えが叶います。しかし措置変えの時期は一年に一度進級時や入学時となるので、年度の途中には正式には特別支援級在籍とはなりません。ただその学校の校長判断で、慣らしとして特別支援級でやってみるという、所謂体験入級みたいな意味合いにおいては可能です。

 

ちなみに、その学校や専門家などの間で行われる審議の基準ですが、対象児童にとって、集団でやっていった方が伸びるのか、少人数で特性に寄り添ったサポートをしていった方が伸びるのか、というのが最大の論点となるかなと思います。また、その子の知能を含む様々な能力もポイントで、例え診断がついていても集団でやっていけているようであれば、審議の結果NOとなる場合もあります。

尚、保護者でたまに勘違いしている人がいるのですが、もともと不登校のお子さんで、特別支援級に行けば手厚いサポートによって登校ができると思っている人や、勉強が苦手だけど特別支援級でなら人数が少ないしペースもゆっくりだからついていけるのでは…と(個別指導塾のように)思っている人がいます。もちろんそういう効果も児童のタイプによっては多少は出てくるかとは思いますが、あくまでも今の日本の特別支援級はそういう支援の前提ではほぼ考えられていないので、その効果を求めて入りたいと訴えても難しいのです。

それと、前の記事にも書いたように不登校になる原因はそれこそ様々で発達障害及び発達の偏りということそのもののみを取り上げて特別支援級に行けば不登校が解決するという単純なものでもなく、それ以外の要素を変えようとするでもなく措置変えだけを望んだとしても残念ながら解決は難しいのです。実際発達障害及び発達の偏りのある子で不登校の子が特別支援級に入ることができた事例で、不登校が解決した事例は今まで見てきた中ですが限りなく少ないです例えば家庭環境、例えば精神疾患が関係していたとしたら、まずはそちらに焦点を当てて支援していった方が、その子にとって明らかに状態が良くなる、ということの方が多いです。結果、発達の偏りが前ほど目立たなくなった…なんてこともあります。もちろん精神状態が良くなったけどもやはり発達の課題が大きく特別な支援が必要、となったら再度審議にかけることもあるでしょう。ただまずは他の支援が優先です、となるか、同時期に特別支援級にも入れて様子を見てみましょう、となるかはその学校や地域によって考え方が違うので何とも言えませんが、不登校児童が学校に来られるかもしれない、という希望的観測のみを持って特別支援級を許可しても、結果何も変わらなかったなんてことが続けば、今後の特別支援級のあり方自体が問われてしまうと思うので…。

 

また、躾とか教育方針が関係していてその子の発達の偏りに拍車をかけている場合も割とあり、検査してみたら知能はそこまで低くなかった、ということもあるのです。しかし、躾や教育方針を見直すって、結局親自身の生活及び精神的な傷(親の成育歴など)そのものを見直さないといけないことにも繋がってくるのでかなり難しく、先生側はそれを指摘できないし(親と気まずくなるし専門家じゃないし)、審議の結果NOだった場合の理由とかはまず伝えられないでしょうね。*保護者自身からのヘルプ要請があればもちろん専門家が対応します。

 

それから逆に、発達検査によって、言語理解能力が高く発言もしっかりでき、やるべきことも理解できる子が、処理能力やワーキングメモリ等が著しく低く(つまり自分や周囲が「できる」と思ってる状態で取り組んでみたら、実は思うようにできなかった、ということが繰り返される状態)自己肯定感がダダ下がりになってしまい、二次障害に苦しんでいることがわかる、というケースも結構あり、でも周囲は(場合によっては本人自身も)本人の苦しみには気づきにくく、特別支援級の方が実は適切なのに保護者が反対する、というパターンもあります。こういうケースは教師でさえ気づかないパターンもあります。そうなると審議の場にすら上がらないわけで、その子への支援はますます見過ごされてしまいます。

また、おとなしく自己表現が苦手で動きも鈍いがなんとなく周囲に助けられながら集団についていけている子も見逃されがちですね。トラブルを起こさないので他の悪目立ちする子の陰に隠れてしまいがちです。

 

あとは、明らかに周囲へ良くない影響を及ぼしており、集団での生活が困難と思われていて、さらに発達検査でも診断までいかずとも大変そうな数値が出ていたとしたら、その子は特別支援級が望ましいと(だいたい)なるわけですが、頑なに先入観や周囲からの目などを理由に拒む保護者もいますね。その場合本人も拒む場合が多いです(親の影響で)。

 

そんな感じで、「入りたくても入れない児童、入ってほしくても入ってもらえない児童」

…こういうケースも多く、なかなかままならない現実があったりします。はい。